家庭生活の意識と生活スタイルの地域差
―日本家庭科教育学会「児童生徒の家庭生活の意識実態全国調査」の
5地域別に見る再分析結果から―
大森 玲子
目的
今日、価値観の変化などによりスローフードといた動きを耳にするようになり、農山漁村の生活スタイルなどが注目を浴びている。地域の特質は単に食生活ばかりでなく、生活全般のスタイルにも反映し、それらが複合して食を含む個々の生活スタイルを形成していると思われる。そこで、生育期にあたる小中高の子どもたちの生活スタイルに焦点をあて、地域による相違とその特徴を明らかにすることを目的とした。
方法
データアーカイブに収録されている日本家庭科教育学会が2001年に実施した『児童生徒の意識実態全国調査』データを再集計した。分析の中心は住宅地域、商業地域、農業地域、工業地域、漁業地域に再分類した5地域と各データとのクロス集計である。
結果及び考察
家庭生活(衣食とそれ以外の家庭の仕事)、家庭についての考え、将来の生活に対する考えを分析した。その結果、漁業地域と工業地域に特徴的な傾向があらわれた。すなわち漁業地域では、家族そろって食事をとる人の割合が高く、父親の家事参加が低かった。さらに家庭生活を送る上で、労力の分担協力が重要であると考える傾向が強く、それを果たそうと考えている人が多かった。また自分の将来の生活については自立意識が低い傾向にあった。一方工業地域では、一緒に食べる割合が低く、コンビニの利用が高いなど効率的な食事を望む人が多かった。また、家庭に対する考えでも、家族の労力の分担はあまり重視せず、コミュニケーションによる理解を重視し、将来については個人として自立していきたいという人の割合が高かった。
まとめ
小中高の子どもたちの家庭生活の意識と生活スタイルを5地域別に見た結果、大きな特徴として、漁業地域で伝統的な家族観に近い傾向が見られた。また工業地域では、それとは反対に個人を優先させ尊重する家族観に近い傾向がみられた。